さて、遺言を書くぞい。預金の分け方は、ライオン銀行はばあさんで、カモシカ銀行は子どもに分けるかのう。
ちょっと待った!金融資産の分け方を決めるときに、銀行ごとに分けるような方法は絶対にダメだよ!
なにっ、それはなぜなのか教えておくれ
金融機関や金額の指定はダメ
遺言を書くときに、銀行預金などの「金融資産」をどのように配分するかを指定する必要があります。
指定する方法はいくつかありますが、その中でも、「金融機関」や「金額」での指定は、後々のトラブルとなる可能性があるため、避けるべきです。
では、なぜ避けるべきなのか。またどのような金融資産の指定方法があるのかを解説します。
金融資産の指定方法
遺言書を書くときに、銀行預金などの「金融資産」の分け方を指定する方法は、以下のようなものがあります。
割合を指定
もっともシンプルでオススメなのが、割合で指定することです。
具体的には、「妻に2/3、長男に1/3」のような書き方です。
この方法であれば、亡くなるまでに財産が増えようが減ろうが、この配分が変わることはありません。
金融機関を指定
金融機関ごとに相続人を指定する方法もあります。
具体的には、「妻にはライオン銀行、長男にはカモシカ銀行」などと書く方法です。
この方法は、メイン銀行やサブ銀行などがハッキリしているときに、イメージがつきやすいので選ばれがちです。
金額を指定
特定の人の金額を指定して、他の相続人には残った金額を指定するなどの方法です。
具体的には、「妻に1000万円、残りを全て長男」などと書く方法です。
この方法であれば、どうしても特定の相続人に決まった金額を遺したいケースなどに使うケースが散見されます。
ほうほう、どれも問題なさそうじゃがなあ。
割合で指定しないリスク
どれも問題なさそうに見えますが、実は「金融機関を指定する方法」と、「金額を指定する方法」は、大きなリスクがあります。
金融機関の指定リスク
金融機関で配分を指定すると、以下のようなリスクがあります。
遺言作成後も資金シフトが出来てしまう
遺言書を書く意義としては、誰にどの程度の財産を遺すか決めることにあります。
しかし、金融機関ごとに配分すると、遺言書作成後も資金が簡単に動かせてしまいます。
予定していなかった大きな出費などがあれば、ある特定の口座残高のみ大きく減ってしまいます。
成年後見人によって、特定の金融機関に集約される
将来的に後見人がついた場合、財産管理をしやすくするために、預金を特定の金融機関に集約される可能性があります。
そして相続が発生したときには、1つの金融機関しか残っていないというリスクがあります。
確かに、たくさん金融機関があると管理は大変になるからのう。
金融機関の合併
金融機関がそのままならいいですが、合併してしまう可能性もあります。
仮に、遺言者と取引のあった「ライオン銀行」と「カモシカ銀行」が合併した場合、どのように分けるか揉めてしまう可能性もあります。
金額での指定リスク
金額で配分を決めると、以下のようなリスクがあります。
残高が指定金額に不足する
遺言書を作成したあとに残高が大きく減ると、指定金額に不足する可能性があります。
例えば、「妻に1000万円、残りを全て長男」と書いたのに、実際の残高は500万円しかない場合もあります。
その場合、長男は1円も貰えないことになりえます。
残余の財産を受け取るはずの相続人の遺留分を侵害
このように長男が全くお金をもらえないケースでは、最低限は財産を受け取れる権利である「遺留分」を下回ってしまうことになりえます。
円満に相続手続きを進めるためにも、なるべく各自の遺留分は確保してあげましょう。
まとめ
金融機関や金額を指定したいケースはありますが、少しでも遺された家族が困ることのないような遺言書を作りましょう。
遺言書を作るときは、自分で考えてもいいですが、プロに相談しながら作ることも1つの選択肢です。
自分にあったやり方で、元気なうちに作りましょう。
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