近所のじいさんが、ついに認知症になってしまったぞ。こうなると相続手続きに影響はあるのかい
大いに影響があるよ。
認知症になると、自分の相続のための準備や、親族に相続があったときの手続きに大きな影響があります。
認知症とはなにか
認知症とは、脳の神経細胞の障害によって、記憶力や判断能力が低下して、日常生活に支障が生じた状態のことをいいます。
認知症は21世紀の国民病
認知症は今でも社会問題となっていますが、その患者数は、これからさらに増えると予想されています。
高齢者(65歳以上)の認知症患者数は、2012年で462万人と、高齢者の7人に1人が発症しています。
しかし、これが2025年には約700万人と、5人に1人が認知症患者になると見込まれています。(内閣府調査)
700万人といえば、埼玉県の人口に匹敵するほどの大きな数字です。
そんなに多いのか!他人事だと思っていたが、自分にも関係のあることなんじゃな。
認知症になると出来ないこと
認知症になり、意思能力がないとされる『意思無能力者』になると、ほぼ全ての法律行為ができなくなります。
自分の相続対策で出来なくなること
まずは、自分の相続対策として出来なくなることです。
・生命保険の契約
・生前の贈与
・養子縁組
・不動産の購入、建築、処分
むむっ、もはや何も出来ないじゃないか。
そうだよ。認知症になると、契約や贈与など相続対策として出来る事がほぼ無くなってしまうんだ。
自分が相続人となる際の手続きで出来なくなること
次に、自分が相続人となる際の手続きで出来なくなることを解説します。
・遺言によって、不動産を相続
認知症になると、相続人として身内などの遺産分割協議にも参加出来なくなります。
これは、財産を受け取るか否かの問題ではありません。
また遺言書があったとしても、不動産を相続する旨の遺言内容であった場合、成年後見人をつけなくては手続きを進められません。
遺言書があっても、不動産の相続は出来ないんじゃな。
事前に準備出来ること
公正証書遺言を書く
遺言書を書いておくことは必須です。
さらに言えば、自筆証書遺言ではなく、内容をプロに相談出来る公正証書遺言を強くオススメします。
遺言書はいつでも書き直し出来るので、とにかくまずは書いてしまうことです。
1番のリスクは、いつか書こうと思っている間に認知症の進行や不慮の事故で、遺言書を残せないことです。
任意後見人を選んでおく
次にすることは、任意後見人を選んでおくことです。
任意後見人とは、本人がまだ元気なうちに、将来自分の判断能力が不十分になったときに、成年後見人となる人を事前の契約によって決めておく制度です。
この制度を利用しておけば、自分が認知症になった場合に、財産管理を任せたいと決めた人が本人に代わって財産や権利を守り、法的に支援してくれます。
また任意後見人が事前に選任しておいても、自分の判断能力がしっかりしていれば、亡くなるまで自分で手続きをすることが可能です。
ある意味では、『お守り』と考えてもいいかもしれません。
なお、任意後見制度を利用せずに認知症などになった場合は、『法定後見制度』を使う必要が出てきます。
法定後見制度とは
法定後見制度とは、既に判断能力が不十分になった時に、家庭裁判所によって後見人が選ばれる制度です。
この制度では後見人を家庭裁判所が決めるため、自分で信頼できる人を指定することができません。
また、以前は法定後見制度でも家族が後見人として選ばれるケースも多かったのですが、最近では全体の3割を切っています。
家庭裁判所が決める後見人は、専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士等)が選ばれ、身内が財産を管理できなくなる上、毎年24万~72万程度の費用を払うことになります。
費用負担も大きいのう。やはり事前に信頼できる家族を指定しておきたいもんじゃのう。
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